車の雑学

EV販売減速:バブル崩壊か?3つの壁が突きつける次世代モビリティの課題

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EV車に充電している

2024年のEV販売は1700万台に達する見込みですが、全体の自動車販売に占めるEVの割合は、依然として20%にとどまると予測されています。
このように、EV市場は成長を続けているものの、地域によっては販売の減速が見られ、特に補助金政策や市場の成熟度が影響を与えています。

EVの販売成長率は以前ほど高くありませんが、これを「失速」というよりは、「成長の鈍化」と表現するのがより適切でしょう。
地域や企業によって状況は異なり、特に欧米の既存メーカーが苦戦している一方で、中国市場や中国メーカーは比較的好調を維持しています。

この記事では、EVの置かれた現状と、成長鈍化の主要因3つを解説いたします。

EV販売の現状

  1. 販売台数の継続的な増加
    2024年上半期の世界EV販売台数は700万台で、前年比20%増加しています。
    これは確かに2023年の39%増と比べると伸び率は鈍化していますが、絶対数としては120万台ほど増えています。

  2. 地域別の状況
  1. 期待値とのギャップ
    アメリカでは、第3四半期(7〜9月期)の販売台数が前年比50%増となりましたが、これは業界やアナリストの期待を下回り、失望感が広がりました。
  2. 投資計画の見直し
    GMやフォード、テスラなどが投資計画の先送りを発表しています。
    これは売り上げの伸び悩みや、経済の下振れ懸念が背景にあります。

    販売台数も期待外れ「EV市場」に広がる不安の正体

以下は、具体的なデータとトレンドです。

販売数の減少

テスラの販売減少
テスラは2024年の第1四半期と第2四半期において、前年同期比でそれぞれ8.5%および4.8%の販売減を記録しました。
この傾向は、特に米国市場において顕著です。

欧州市場の影響
欧州では、特にドイツとフランスでの販売が大幅に減少しています。
欧州全体のEV販売は、2024年8月に43.9%の減少を記録しました。

EV販売減速の要因  新技術に興味を持つ層の需要飽和

EV充電ステーション

初期採用者の需要飽和

EVの初期市場は、新技術に興味を持つ層(アーリーアダプター)によって牽引されてきました。
これらの消費者は環境意識が高く、新しい技術に対する好奇心が強い傾向があります。
しかし、この層の需要がある程度満たされたことで、成長率が鈍化しています。

マスマーケットへの移行の難しさ

初期採用者の次に来る、一般消費者層(マスマーケット)の取り込みが思うように進んでいません。
この層は価格や実用性をより重視する傾向があり、EVの高価格や充電インフラの不足などが障壁となっています。

価格帯のミスマッチ

現在のEV市場は、高級車セグメントが中心となっています。
例えば、テスラの車種は日本国内では、500万円以上からの価格設定となっており、一般消費者にとっては手が届きにくい状況です。

技術的な不安

バッテリーの劣化や航続距離の限界など、EVの技術面での不安が一般消費者の購入を躊躇させる要因となっています。
初期採用者は、これらのリスクを受け入れる傾向がありますが、一般消費者はより慎重です。

中古車市場での価値低下

EVは、中古車市場での価値低下が大きいことが指摘されています。
初期採用者の多くは、新車購入を好む傾向がありますが、一般消費者にとっては、中古車の価値低下が購入を躊躇させる要因となっています。

EV販売減速の要因  バッテリー性能と充電インフラ問題

EV急速充電施設

最近の電気自動車(EV)の販売停滞は、主にバッテリー性能に対する不安と、充電インフラの整備不足が大きな要因として挙げられます。
以下に、これらの要因について詳しく説明します。

バッテリーの性能に対する不安

劣化の懸念

製造後6年半の平均的なバッテリー劣化率は、13.5%とされています。
一部のモデルでは、3年弱で16%の劣化が見られるケースもあり、消費者の不安を煽っています。

EVのバッテリーは、使用するにつれて劣化します。
特にリチウムイオンバッテリーは、充電サイクルや温度に敏感で、適切な管理がされないと寿命が短くなる可能性があります。
消費者の中には、バッテリー交換のコストや手間を懸念する声も多く、これが購入意欲を削ぐ要因となっています。

実走行距離の低下

バッテリー劣化に伴い、実際の走行可能距離が大幅に減少するケースがあります。
多くの消費者は、EVの航続距離がガソリン車に比べて短いことを懸念しています。
カタログに記載されている走行可能距離と、実際の走行距離との間には乖離があり、特に坂道や気象条件、エアコン使用などの影響で実際の走行距離は、カタログ値の約70%程度になることが多いです。
これにより、長距離移動を考える消費者は不安を感じ、購入をためらう傾向があります。

中古車市場への影響

バッテリー性能の不確実性が、中古EV市場の発展を妨げています。
一部のディーラーは、バッテリーの健康状態を表示する取り組みを始めていますが、まだ一般的ではありません。

急速充電の影響

頻繁な急速充電は、バッテリーの劣化を加速させる可能性があります。
これにより、ユーザーは充電方法に気を使う必要があり、利便性が損なわれています。

充電インフラの整備不足

EV充電施設を案内する看板

充電ステーションの不足

EVの普及には充電インフラの整備が不可欠ですが、日本を含む多くの国では充電ステーションの数が十分ではなく、特に長距離移動時に不安を感じるユーザーが多いです。
特に急速充電器の設置が進んでおらず、充電にかかる時間が長いことが、消費者の不安を助長しています。
例えば、急速充電でも80%充電まで20〜40分かかるため、ガソリン車の給油に比べて手間がかかると感じる人が多いです。

充電時間の長さ

急速充電でも30分程度かかることが多く、ガソリン車の給油と比べて時間がかかります。
これは特に、長距離移動時に大きな障害となっています。

充電規格の統一性欠如

メーカーや地域によって充電規格が異なる場合があり、ユーザーの混乱を招いています。

自宅充電設備の問題

集合住宅居住者など、自宅に充電設備を設置できない人々にとっては、EVの所有が現実的ではありません。

電力網への負荷

EVの普及に伴い、電力網への負荷増大が懸念されています。
特に、ピーク時の充電需要への対応が課題となっています。

これらの要因により、多くの消費者がEV購入を躊躇しています。
バッテリー技術の更なる向上と充電インフラの大規模な整備が、EV市場の成長を加速させるために不可欠です。
また、政府の支援策や自動車メーカーの技術革新も、重要な役割を果たすでしょう。

EV販売減速の要因 EV補助金の減額

世界的にEV販売が伸び悩んでいる要因として、各国のEV補助金の減額が挙げられます。

EVの普及促進策として各国政府は初期に、EV購入に対する多額の補助金を提供してきました。
しかし、EV市場が成長するにつれて、政府は財政負担を軽減するため、補助金を段階的に減額する政策転換を行っています。

以下に、主要国のEV補助金削減の状況を示します。

中国

2022 年末をもって、新エネルギー車への政府補助金を終了しました。
補助金が終了したにもかかわらず、2023年にはEVの販売は依然として強い成長を見せましたが、2024年には成長が鈍化する可能性が指摘されています。

ヨーロッパ

EU諸国では、EVに対する消費税減免や購入補助金の削減が進んでいます。
欧州では特に、EV販売が政府補助金に依存している構図が鮮明になっています。
ドイツでは、補助金プログラムの突然の終了が販売にブレーキをかけ、2024年にはEV販売が急減する見込みです。

アメリカ

アメリカでは、EV購入に対する税額控除が段階的に縮小されています。

補助金の削減は、消費者のEV購入意欲を低下させ、販売を抑制する要因となっています。
多くの消費者は依然として、EVの価格がガソリン車と比べて割高であると考えており、補助金の減額によりEV購入のメリットが薄れたと感じる人が増えています。

まとめ

昨今、EV車の急激な販売減速が話題を賑わせてます。
その主な要因をアーリーアダプター層の需要飽和、バッテリー性能と充電インフラ問題、EV補助金の減額という3つの視点から解説しました。
しかしEV車の現状を見てみると、一時期の爆発的な販売伸長から堅実な成長に移行しただけかもしれません。
この成長を更なるものとするためにも、バッテリー技術の進化が不可欠となります。
例えば、全固体電池などの新しい技術が実用化されれば、航続距離やバッテリー寿命の問題が改善される可能性があります。

充電インフラの拡充も、政府や企業が充電インフラの整備に力を入れることで、EVの利用が促進されることが期待されます。
充電ステーションの数を増やし、充電速度を向上させることが急務です。
このように、バッテリー性能への不安と充電インフラの整備不足を解決していくことで、EV市場のさらなる成長が期待されます。

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